非」と「不」と「無」
「この三つの語の違いは?」辞書を調べたが書いている辞書がなかった。 否定を表す語であるが、その違いをみてみよう。 「非」は非常識・非公開・非合法・非合理・非売品・非常・非凡などのように、後ろの語の意味がもつ枠から外れたという意味である。道理にそむいたり、道にはずれたりというよくないことが多い。非運・非人道的・非俗・非道・非難・非人・非礼などもその例である。 「不」は不安・不意・不運・不快・不信・不足・不能・不変・不便・不要・不和など「…ない」という打消しの意味である。不安定・不可能・不健全・不親切・不得意なども同じ意味である。最近流行の「不倫」は、辞書には「人倫にはずれること。人道にそむくこと」とある。 「非倫」の方がよいのでは? 道徳的ではないということで「不倫」なのか? 「無」は無縁・無害・無給・無限・無力など、「有」の字と取って代わることができる。 「有る・無い」の無いで、存在しない意味である。 「無」は呉音はム・漢音はブである。無愛想・無作法・無粋などはブと読む。 いずれも否定を表す語なので、厳密に使い分けられないこともある。 しかし、「非」には善悪の価値観が多少加わるが、「不」「無」は単なる打消しや存在しないという意味で善悪の意識はない。従って、「不」と「無」のどちらでも使える語もある。 案内・気味・器用・沙汰・作法・調法・風流・用心・様・粋などは、ブアンナイ・ブフウリュウ・ブザマのように全てブがつき「不」と「無」の両方が使える。 非法(法にはずれること) 無法ムホウ(法にはずれ道理のないこと・乱暴なこと) 非礼(礼儀にはずれること) 無礼ブレイ(礼儀をわきまえないこと) 非運(非常なふしあわせ) 不運フウン(運の悪いこと)などは両方使えるが、 意味のニュアンスが多少異なる。 -------------------------------------------------------------------------------- 岩岡 登代子(November 12, 1999)
by iwaoka2
| 2001-01-01 23:44
| 言葉のエッセイ
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外国人の話す愉快な日本語から、我々日本人がこれまで気がつかなかった日本語の特徴が分かることもあります。国語学界の謎といわれた「連濁の法則」も、ほぼ解明できました。
言葉は時代とともに、変化します。日本人の日本語も?が多くなりました。 カテゴリ
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