我々は日常、動詞と名詞の区別を意識していない。しかし、実際には無意識のうちに動詞と名詞の区別をしている。それは丁寧の助動詞「です」と「ます」の使い分けを見れば明らかである。
「みかん-です」「みかんを食べ-ます」「今日は日曜日-です」「今日は休み-ます」 このように名詞の後ろにはデス、動詞(連用形)の後ろにはマスを使い分けて間違うことはない。これは個人個人が誰でも、無意識のうちに動詞と名詞を明確に区別しているからである。しかし、次の例は動詞に「です」と「ます」が使われているようにみえる。 「前払い-です」 「先に払い-ます」 「炭火焼き-です」「炭火で焼き-ます」 「札幌行き-です」「札幌に行き-ます」 これらの「払い 焼き 行き」の、形は動詞連用形である。しかし、意味上の働きは名詞と動詞に分かれる。 「車のハンドルには遊び-が必要だ」 「金-が必要だ」 「一週間に、二日休み-がある」 「暇-がある」 「育ち-がいい」 「品-がいい」 「私の思い-が通じた」 「心-が通じた」 「遊び 休み 育ち 思い」はすぐ後ろに格助詞(名詞や代名詞につく)がくる。「金 暇 品 心」と同じように名詞である。 動詞の場合は「外で遊び-ます」「休み-ます」「育て-ます」のように、すぐ後ろに格助詞はこない。動詞や助動詞がくる。 「二時間待ち・二時間待つ」をみると、「待ち」は名詞で、「待つ」は動詞である。 この連用形は「待つ」という事を表す意味上の名詞である。 動詞連用形の場合にも「です」と「ます」で、名詞と動詞をきちんと使い分けている。このように、動詞連用形は名詞でもある。意味も名詞としての事柄だけを表し、この場合は動詞としての動きや作用の判断を表さない。これを「連用形名詞」と名付けることにする。 形容詞や形容動詞の語幹(活用しない部分)は、名詞である。「赤-い」の赤は名詞である。私達は文法を一人一人頭の中に持っていて、名詞か動詞かを実は自分で区別している。それを本によって学習すると面倒臭くなり嫌いになる。 連濁において、動詞と名詞の区別は非常に大切である。前にくる言葉が動詞の場合、後ろに来る言葉は連濁をおこさない。「忘れ-去る」「逃げ-切る」「煮え-くり-返る」等がその例である。前にくる言葉が名詞の場合は、連濁をおこす言葉と連濁をおこさない言葉がある。「風-車」「みだれ-髪」は連濁をおこし、「絵-描き」「雨-降り」は連濁をおこさない。連濁をおこす言葉と連濁をおこさない言葉には、いろいろな型がある。
by iwaoka2
| 2003-01-10 23:33
| 言葉のエッセイ
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外国人の話す愉快な日本語から、我々日本人がこれまで気がつかなかった日本語の特徴が分かることもあります。国語学界の謎といわれた「連濁の法則」も、ほぼ解明できました。
言葉は時代とともに、変化します。日本人の日本語も?が多くなりました。 カテゴリ
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