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連濁と日本語-6 動詞と名詞

 我々は日常、動詞と名詞の区別を意識していない。しかし、実際には無意識のうちに動詞と名詞の区別をしている。それは丁寧の助動詞「です」と「ます」の使い分けを見れば明らかである。
「みかん-です」「みかんを食べ-ます」「今日は日曜日-です」「今日は休み-ます」
このように名詞の後ろにはデス、動詞(連用形)の後ろにはマスを使い分けて間違うことはない。これは個人個人が誰でも、無意識のうちに動詞と名詞を明確に区別しているからである。しかし、次の例は動詞に「です」と「ます」が使われているようにみえる。
「前払い-です」 「先に払い-ます」
「炭火焼き-です」「炭火で焼き-ます」
「札幌行き-です」「札幌に行き-ます」
これらの「払い 焼き 行き」の、形は動詞連用形である。しかし、意味上の働きは名詞と動詞に分かれる。
「車のハンドルには遊び-が必要だ」 「金-が必要だ」
「一週間に、二日休み-がある」   「暇-がある」
「育ち-がいい」          「品-がいい」
「私の思い-が通じた」       「心-が通じた」
「遊び 休み 育ち 思い」はすぐ後ろに格助詞(名詞や代名詞につく)がくる。「金 暇 品 心」と同じように名詞である。
動詞の場合は「外で遊び-ます」「休み-ます」「育て-ます」のように、すぐ後ろに格助詞はこない。動詞や助動詞がくる。
「二時間待ち・二時間待つ」をみると、「待ち」は名詞で、「待つ」は動詞である。
この連用形は「待つ」という事を表す意味上の名詞である。
動詞連用形の場合にも「です」と「ます」で、名詞と動詞をきちんと使い分けている。このように、動詞連用形は名詞でもある。意味も名詞としての事柄だけを表し、この場合は動詞としての動きや作用の判断を表さない。これを「連用形名詞」と名付けることにする。
形容詞や形容動詞の語幹(活用しない部分)は、名詞である。「赤-い」の赤は名詞である。私達は文法を一人一人頭の中に持っていて、名詞か動詞かを実は自分で区別している。それを本によって学習すると面倒臭くなり嫌いになる。

 連濁において、動詞と名詞の区別は非常に大切である。前にくる言葉が動詞の場合、後ろに来る言葉は連濁をおこさない。「忘れ-去る」「逃げ-切る」「煮え-くり-返る」等がその例である。前にくる言葉が名詞の場合は、連濁をおこす言葉と連濁をおこさない言葉がある。「風-車」「みだれ-髪」は連濁をおこし、「絵-描き」「雨-降り」は連濁をおこさない。連濁をおこす言葉と連濁をおこさない言葉には、いろいろな型がある。
by iwaoka2 | 2003-01-10 23:33 | 言葉のエッセイ
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